「出産が大変」は知っている。でも、具体的に何が大変なの?
「出産は大変」
おそらく多くのパパが、この言葉自体は知っていると思います。
でも、
「具体的に何がそんなに大変なの?」
と聞かれると、意外と答えられないのではないでしょうか。
出産というと「赤ちゃんが生まれる瞬間の痛み」を想像しがちですが、実際には出産そのものだけでなく、出産後の身体の回復にもかなりの時間が必要です。
そして、その回復途中から赤ちゃんのお世話が始まります。
この記事では、医学的な情報をもとに、パパにもイメージしやすいように「妊娠・出産後に女性の身体で何が起きているのか」をまとめます。
私自身4人目の出産を控えている身ですが、まだまだ知らないことも多いため、これから出産を控えるパパさんたちにもいろいろ知ってほしいと思いまして記事を書きました!
「出産は交通事故レベル」と言われることがあるけれど……
出産の大変さを説明するとき、
「出産は交通事故に遭ったくらい身体にダメージがある」
という表現を見かけることがあります。
ただし、これは医学的に「出産=交通事故と同じ」と定義されているわけではありません。
交通事故と出産では、身体に受けるダメージの種類がまったく違います。
では、なぜこのような例えが使われるのでしょうか?
理由の一つは、
「出産直後の身体が完全に元通りになるわけではない」
ということです。
出産後には、
- 会陰や産道の傷
- 子宮収縮による痛み
- 出血
- 骨盤底への負担
- 筋肉や神経への負担
- 強い疲労
- 睡眠不足
- 帝王切開なら手術の傷
などが起こる可能性があります。
日本産婦人科医会も、分娩後の腹痛の原因として後陣痛や帝王切開後の創部痛を挙げています。また、分娩によって会陰や産道に裂傷が生じることもあります。
つまり「交通事故」という言葉より、
「大きな身体的負荷を受けた状態から、身体の回復が始まる」
と考えたほうが実態に近いでしょう。
出産直後の身体では何が起きている?
会陰・産道に傷ができることがある
赤ちゃんが産道を通ることで、膣や外陰部、会陰などに傷や裂傷が生じることがあります。
場合によっては会陰切開が行われたり、裂傷を縫合したりすることもあります。
つまり出産直後は、
「赤ちゃんが生まれて元気!」
だけではなく、
「お母さん自身も身体の回復が必要な状態」
なのです。
傷の程度によっては、座る・歩く・トイレなどの日常動作がつらく感じることもあります。
赤ちゃんが生まれても「痛みが終わる」とは限らない
「赤ちゃんが出たら陣痛も終わって、痛みから解放される」
と思ってしまいがちですが、そうとは限りません。
出産後は、子宮が妊娠前の状態に戻ろうとして収縮します。
これによって起こるのが後陣痛です。
日本産婦人科医会も、産褥期の腹痛で多いものとして後陣痛を挙げています。
特に授乳時には子宮収縮が起こるため、痛みを感じる人もいます。
つまり、
陣痛
↓
出産
↓
「終わった!」
……ではなく、
出産後にも身体が元に戻るための変化が続く
ということです。
出産後もしばらく出血が続く
出産後には悪露(おろ)と呼ばれる出血・分泌物があります。
そのため、出産直後からしばらくは「出血がある状態」が続きます。
もちろん出血量や経過には個人差があります。
大量出血などは注意が必要で、産後の出血は産科医療において重要な問題の一つです。
パパとして知っておきたいのは、
「出産した瞬間に身体が通常状態に戻るわけではない」
ということです。
骨盤周辺にも大きな負担がかかる
妊娠・出産では骨盤底にも負担がかかります。
骨盤底は、膀胱・子宮・腸などを支える重要な部分です。
分娩の影響によって、
- 尿が出しづらい
- 尿漏れ
- 骨盤周辺の痛み
- 会陰部の痛み
などが起こることがあります。
日本産婦人科医会では、分娩後の尿閉について、分娩時の圧迫・牽引・伸展による神経への影響や、会陰裂傷による腫れ・痛みなどを挙げています。
普段なら何気なくできる、
歩く → 座る → トイレに行く
という行動にも負担を感じる場合があります。
帝王切開なら「出産+手術」
そして忘れてはいけないのが帝王切開です。
帝王切開は、赤ちゃんを出すために腹部を切開して行う手術です。
日本では帝王切開は決して珍しいものではありません。
厚生労働省の資料では、帝王切開率は2020年に21.6%。さらに2023年の分娩取扱実績では23.0%となっています。
つまり、
約5人に1人〜4人に1人程度が帝王切開になる規模
です。
100人なら、約77〜79人が経腟分娩、約21〜23人が帝王切開。
もちろん年齢・施設・妊娠経過などによって割合は変わります。
帝王切開の場合は、出産後にさらに
- お腹の傷の痛み
- 起き上がるときの痛み
- 歩くときの痛み
- 咳やくしゃみのときの痛み
- 傷の違和感
など、手術後の回復も必要になります。
では、入院中はどんな感じ?
一般的な経腟分娩で数日間入院するケースをイメージしてみましょう。
【出産当日〜1日目】
身体への負担が最も新しい時期
- 会陰や産道の傷
- 腫れ
- 出血
- 子宮収縮による痛み
- 強い疲労
などが重なります。
それでも、赤ちゃんのお世話が始まります。
【2日目】
少しずつ動けるようになります。
しかし、
「歩けるようになった=完全回復」
ではありません。
授乳が始まり、赤ちゃんを抱っこする機会も増えます。
授乳によって子宮収縮を感じることもあります。
【3日目】
身体が徐々に回復していきます。
しかし、
- 会陰の違和感
- 痛み
- 悪露
- 授乳による乳房の張り
- 肩や腰の疲労
などが残っている場合があります。
【4〜5日目】
退院できる程度まで回復してくる人が多い一方、
「完全に元通り」ではありません。
ここがパパにぜひ知ってほしいポイントです。
「退院=完全回復」ではない
これが、出産を経験していない人には一番イメージしにくいところかもしれません。
退院すると、
「もう普通に生活できるんだ」
と思ってしまいがちです。
でも実際には、
身体はまだ回復途中。
その状態で、
👶 授乳
👶 おむつ交換
👶 抱っこ
🌙 夜中の対応
😴 睡眠不足
が始まります。
つまり、
身体が回復している途中なのに、24時間体制の新しい生活が始まる
のです。
パパ向けに例えるなら
「交通事故」という例えが縁起悪く感じるなら、こんなイメージが分かりやすいと思います。
🏃 フルマラソンに例えると……
STEP 1
🏃♀️ フルマラソンを限界まで走る
↓
STEP 2
💥 身体が大きな負荷を受ける
- 筋肉の疲労
- 痛み
- 傷
- 出血
- 骨盤周辺への負担
↓
STEP 3
🩹 「さあ、しばらく休んで回復してください」
……ではなく、
↓
STEP 4
👶 24時間の育児がスタート
- 授乳
- 抱っこ
- おむつ交換
- 夜泣き
- 睡眠不足
↓
「回復しながら、新しい仕事が始まる」
これが出産後の大変さを理解する一つのイメージです。
もちろん、出産はマラソンではないので、これはあくまで「負担のイメージ」を伝えるための例えです。
そして気になる「出産で死亡する確率」
ここについては、必要以上に怖がる必要はありません。
日本の妊産婦死亡率は非常に低い水準にあります。
厚生労働省の人口動態統計によると、2023年の妊産婦死亡率は出生10万対3.1でした。死亡者数は23人です。
単純に確率へ置き換えると、
約0.003%
つまり、
約3万人に1人
という規模です。
ただし、この「妊産婦死亡」は「分娩中に死亡する」という意味ではありません。
妊娠中から産後までの妊娠・出産に関連する死亡を含む統計なので、
「出産の瞬間に3万人に1人が亡くなる」
という意味ではありません。
また、年によって変動があります。
「出産は危険なの?」というと……
ここは数字を並べるだけではなく、正しく理解することが大切です。
日本の出産は、世界的に見ても非常に安全な医療環境の中で行われています。
一方で、
安全=身体への負担が小さい
ではありません。
ここを分けて考える必要があります。
「死亡するリスク」
↓
非常に低い
「痛みや身体的負担」
↓
人によって大きく、決して小さくない
「産後の回復」
↓
数日で完全に元通りになるわけではない
ということです。
パパが知っておきたい「出産後の身体」
まとめると、出産後の女性の身体では、
傷
会陰切開や会陰裂傷など。
出血
悪露が続く。
痛み
後陣痛や会陰部の痛みなど。
骨盤底への負担
排尿・尿漏れなどの問題につながることもある。
帝王切開
約5人に1人〜4人に1人程度の規模で行われており、手術後の回復も必要。
疲労
妊娠・出産による身体的負担に加え、睡眠不足。
育児
身体が回復途中なのに、授乳・抱っこ・おむつ交換などが始まる。
これらが重なります。
パパに一番知ってほしいこと
出産について、
「赤ちゃんが無事に生まれたから一件落着!」
と思ってしまうのは、少し違います。
むしろ、
出産
↓
身体の回復
↓
育児開始
ではなく、
出産
↓
身体の回復中 + 24時間の育児 + 睡眠不足
が同時に始まります。
だからこそ、パパにできることがあります。
パパができること
難しいことをする必要はありません。
例えば、
家事を減らす
「何かやろうか?」ではなく、
「今日は俺が洗い物やるよ」
と具体的に動く。
赤ちゃんのお世話をする
おむつ交換、抱っこ、寝かしつけなど。
休める時間を作る
赤ちゃんを見ている間に、奥さんに少しでも寝てもらう。
痛みを軽く扱わない
「もう退院したんだから大丈夫でしょ」
ではなく、
「まだ身体が回復中なんだな」
と考える。
感謝を言葉にする
「ありがとう」
「無理しなくていいよ」
「今日は俺がやるよ」
こうした一言だけでも違います。
最後に
出産は、母親だけのイベントではありません。
赤ちゃんが生まれる瞬間は家族にとって大きな喜びですが、その一方で、母親の身体には大きな変化と負担がかかっています。
「交通事故レベル」という表現を使わなくても、
「長時間の大きな身体的負荷を経験したあと、身体が回復している途中から24時間の育児が始まる」
と考えれば、その大変さは十分イメージできます。
そして、パパが知っておくべきなのは、
「どれくらい痛いのかを正確に想像すること」よりも、
「今、身体が回復途中なんだ」と理解すること。
それだけでも、家事の分担、赤ちゃんのお世話、休む時間の確保など、できることが見えてきます。
出産は「ゴール」ではありません。
赤ちゃんが生まれたその日から、家族みんなの新しい生活が始まります。
そのスタートを、ママ一人に背負わせない。
それが、パパにできる一番大切なサポートなのかもしれません。
※この記事について
出産後の症状や回復には大きな個人差があります。ここで紹介した内容は一般的な情報であり、個々の症状を診断するものではありません。
強い出血、激しい・悪化する痛み、発熱、息苦しさなど、気になる症状がある場合は、我慢せず医療機関へ相談してください。
また、帝王切開率や妊産婦死亡率などの統計は年度によって変動します。
記事内の数値は厚生労働省などの公的資料をもとにしています。
参考:
- 厚生労働省「人口動態統計・妊産婦死亡数及び妊産婦死亡率の推移」
- 厚生労働省「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」
- 日本産婦人科医会「分娩中・産褥期に起こり得る症状」
- 日本産婦人科医会「産道裂傷・腟壁血腫」
- ACOG「Postpartum Care Recommendations」

